不整脈外来

心臓は役割により上下左右の4つの部屋に分かれています。それぞれの部屋が拡張と収縮を繰り返すことによって血液を送り出すポンプとして働いていますが、効率よく血液を送り出すためにタイミングを整えるシステムがあり、これを「刺激伝導系」と呼んでいます。正常の状態では、心房の上部にある洞結節から1分間に60-100回の規則的な電気刺激が出て、心房全体に広がり、心房から心室へ電気を受け渡す房室結節へ伝わります。房室結節から心室へ伝わり、心房・心室が連動して収縮します。この「刺激伝導系」を流れる電気信号の発生、伝達が正常でなくなり、脈拍が遅くなったり、速くなったり、乱れたりした状態を不整脈と呼びます。

不整脈には様々な種類のものがあり、それぞれ重症度や治療方法も異なってきます。当部門では不整脈全般を扱い、診断・治療に当たっております。

診療スケジュール
受付時間 診察開始 月曜 火曜 水曜 木曜 金曜 土曜

7:00~11:30

9:00 (予約のみ) - (予約のみ)※ - - -

※水曜日の診療は第1・3・5週目のみとなります。

※担当医は急遽変更になることがあります。受診の際はご確認の上、ご来院ください。

休診や診療制限等のご案内は、最新の診療スケジュールをご確認ください。

 

診療スタッフ
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谷 友之
不整脈・アブレーションセンター長(循環器内科部長)
資格・専門医

 

その他

 

施設認定

日本不整脈心電図学会認定施設

ペースメーカー移植術認定施設

植込み型除細動器移植認定施設

両室ペースメーカー移植認定施設

両室ペーシング機能付き植込み型除細動器移植術認定施設

左心耳閉鎖システム実施認定施設

診断法
心電図

身体の各部位に電極を装着し、心臓の電気をモニタリングすることで不整脈の有無や心臓の状態を検査します。

 

ホルター心電図(24時間心電図)

心電図では検査中の心臓電気のみの評価であるため、日常生活での不整脈評価を行うために用います。

24時間の装着により、不整脈の有無や不整脈回数、日常生活での心拍数変化などを評価することが可能です。

 

携帯心電図/イベントレコーダー

ご自身で簡単に装着と取り外しができるもので、長期間のモニタリングを可能としたものです。

約1か月間程度の評価が可能です。有症状時にイベントボタンを押すことで、症状があった際の心電図を記録すると共に、オートトリガーを搭載し無症状・有症状に関わらず異常波形を自動的に記録します。

 

植込み型心臓モニター/ループレコーダー

前胸部の皮下に心電図記録できるチップを植込みます。症状があるものの発作頻度が少なく、発作を不定期に繰り返す場合に用います。

国内では【原因不明の意識消失発作】や【潜因性脳梗塞(原因がわからない脳梗塞)】の2つが適応になります。日帰りもしくは1泊2日の入院にて植込みを行います。

 

電気生理学的検査

心電図検査、ホルター(24時間)心電図検査などの検査を行っても、原因が不明な場合や薬剤での治療効果判定、カテーテルアブレーションや植込み型除細動器移植術などの治療を行う前の評価などで行います。鼠径部(足の付け根)や頸部(首の付け根)より血管を通じて心臓内部にカテーテルという細い管を入れ、電気信号の発生や伝達の状況を直接観察し、電気刺激により不整脈を誘発して性質を詳しく調べる検査です。最低1泊2日の入院にて行います。

治療法
カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術など)

カテーテルアブレーションとは心電図や電気生理学的検査によって、頻拍性不整脈の原因部位が判明した場合に、その部分を焼灼することによって頻拍症の根治を目的とします。

カテーテルという直径2mm程度の細い管(目的に応じて太さや形状が異なります)を、鼠径部や頸部から血管を通じて心臓内に挿入し、不整脈発生部位や回路にカテーテルを当てて、原因となる心筋の電気を確認しつつ焼灼します。

 

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ペースメーカー植え込み

心臓は洞結節から、心房、心室の順に電気的興奮が伝わることにより、脈拍を作り出しています。この経路(刺激伝導系)に障害が起きると、脈が遅く(徐脈)なることがあります。脈が遅くなることで、血液を送り出す量・回数が減り、めまい、倦怠感、胸痛、失神等の症状を生じます。

ペースメーカー治療では前胸部の皮下に本体を植込み、血管を通じて刺激のための電極リードを心房、心室に打ち込み固定します。正常な心拍数に相当する頻度で電気的刺激を加えて、徐脈による症状を予防することを目的とします。

 

リードレスペースメーカー

経静脈的ペースメーカーは細菌感染リスクや皮膚ストレスなどの合併症リスクがあり、これらの問題を解決するためにリードレスペースメーカーは開発されました。鼠径部(足の付け根)からカテーテルを心臓まで通し、小型のペースメーカー本体を右心室内に直接打ち込んでくる治療です。現在はまだ右心室のペーシングしかできないことが制約として挙げられますが、他科の疾患で感染症リスクが高い方や透析患者さま、創部の治りが悪い方などに恩恵のある治療となっています。当院では既に50例以上の植込みを行っており、手技になれた担当者が治療に当たっています。

 

植込み型除細動器(ICD: Implantable Cardioverter-Defibrillator)

時に致命的になる心室頻拍や心室細動への植え込みが適応となります。一度、心室細動、心室頻拍が生じ、心停止状態となった場合は5分以内に胸骨圧迫や電気ショックによる治療を行う必要があり、常に救急処置が間に合うとは限りません。この為、植込み型除細動器を植込むことで、患者さまの心電図を常に機械が監視し、心室頻拍や心室細動が出現した場合は、即座に不整脈治療を行なって正常拍動を回復させることが目的となります。

植込み型除細動器は前胸部に本体を植込み、その部分からから血管を通じて心臓に電極リードを打ち込む【経静脈的植込み型除細動器】と左側胸部に本体を植込み、胸部中央の皮下にリードを植込み【皮下植え込み型除細動器】があります。患者さまの病状に応じてどちらにすべきかを検討し、植込み治療を行っております。

 

両室ペーシングによる再同期療法

重症心不全の治療には、既に開始されている薬物療法に加え、さらなる治療のひとつとして両室ペーシング(または心臓再同期療法:CRT)と呼ばれる治療方法があります。高度の心室収縮機能不全の状態の患者さまでは、全身に血液を送り出す左心室において心筋壁の収縮タイミングが大きくずれている場合があります。ただでさえ心筋の収縮が低下しているうえに、タイミングがずれて収縮力が有効に利用できないことになり、このタイミングのずれを左心室と右心室の2箇所に電極を置き、心室を刺激することで、収縮するタイミングを合わせ、心臓が収縮する効率を改善する方法を両室ペーシング(または心臓再同期療法:CRT)といいます。

 

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経皮的左心耳閉鎖術

心房細動の患者さまにおいて、血栓の多くが発生する場所と考えられているのが左心房内の「左心耳」と呼ばれる部位です。左心耳は左心房の上側にある薄い袋状の部分で、心房細動では300-500回/分の頻度の電気刺激が起こることで、心房が震える状態になり収縮していないのと同様の状態となります。これにより左心耳内の血流が特に遅くなってしまい血液が滞留するために、大きな血栓ができやすくなります。心房細動が原因でできる血栓の約9割が、左心耳の中でできていると言われており、経皮的左心耳閉鎖術は足の付け根よりカテーテルを心臓内に進め、心房中隔(右心房と左心房の間の壁)を小さな針を用いて通過し、Watchmanデバイス(左心耳内を閉鎖する機械)を左心耳内に展開して閉鎖する治療です。

不整脈の種類
心房粗動

心房内を電気刺激が大きく旋回することによって生じます。心房粗動は旋回回路が大きい為、抗不整脈薬で抑制することが困難なことが多く、カテーテルアブレーションでの治療の良い適応とされます。心房粗動には数種類のパターンがあります。通常型は右心房と右心室の間にある三尖弁の周囲を電気刺激が旋回することによって頻拍となり、旋回路を線状に焼灼して治療します。通常型の場合では成功率は高く95%以上とされます。非通常型は心臓手術を受けたことのある患者さまや心房細動アブレーションを受けられた後の患者さまに多く、旋回路が複数存在したり、焼灼しなければならない部分が広範囲になったりすることがあり、時に治療が難しい場合があります。

 

心房頻拍

心房内の狭い範囲に異常な組織があり、ここから電気刺激が頻回に出される(異常自動能)ために頻拍を生じるものです。もしくは心房内に電気の旋回する回路(リエントリー回路)が生じるも起こります。基本的にまずは抗不整脈薬による治療を行い、薬剤にて抑制することが困難な場合はカテーテルアブレーションを検討します。異常組織そのものやリエントリー回路の一部を焼灼することで頻拍を治療します。異常組織が何か所も存在していたり、カテーテルが届かない場所、房室結節などの重要な組織のある場所に異常組織がある時は焼灼による治療ができない場合もあります。

 

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍はその原因となる電気回路の部位によって大きく分けて「房室結節回帰性頻拍」と「房室回帰性頻拍」に分かれます。

 

心房と心室を電気的につないでいる部位を房室結節といいます。

この房室結節には電気の通るスピードが速い電線(速伝導路)と遅い電線(遅伝導路)が束になっています。ふつうは速い電線だけが使用されて電気刺激は伝わっていきますが、まれに速伝導路と遅伝導路との間に回路が形成され、この回路を電気刺激が回る頻拍を「房室結節回帰性頻拍」と言います。

 

正常な刺激伝導系以外に余分な異常伝導路を先天的に持っている場合があります。その頻度は1000人に数人と言われ、この余分な伝導路の事を副伝導路といいます。副伝導路は心房と心室を架橋し、心臓の右側・左側いずれでも起こり得ます。正常な電線と余分な電線(副伝導路)との間に回路が出来てしまい、その間を電気刺激が回る頻拍を「房室回帰性頻拍」と言います。副伝導路の性質が心房から心室への順行性伝導できるものを顕性WPW症候群と言い、心房細動等の他の疾患と合併することで、時に致命的になることがあります。

 

いずれの疾患もまずは抗不整脈薬にて治療を開始し、発作の抑制が困難である場合や若年で内服期間が長くなる場合はカテーテルアブレーションでの根治を検討します。

 

心房細動

心房細動では、1分間に300-500回の不規則な電気興奮が心房に生じる状態です。電気刺激頻度が多すぎることで心房が空打ちしてしまい、心房は動いていないのと同様になります。

また、心室へは房室結節が電気を通す頻度をコントロールするため、すぐに致命的になることは少ないですが、心室の動きも不規則となり、1分間に100-200回程度の頻拍になることがほとんどです。心房細動が起こると、心房が心室をサポートする機能が失われ、収縮のタイミングがばらばらになることで、心臓全体のポンプ機能が低下し、最終的に心不全を起こすことがあります。また心房の中で滞留した血液が凝固して血栓(血液の塊)となり、その血栓が脳などの他の臓器への動脈血管を塞いでしまい、脳梗塞などを引き起こすことがあります。心房細動自体は死に至る病気ではありませんが、動悸などの症状で生活の質を落としてしまうだけではなく、放置しておくと“脳梗塞”や“心不全”の危険性を増大させることがあり、注意が必要な不整脈です。

 

心房細動の原因はそのほとんどが肺から心房へ血液を戻す肺静脈の付け根が原因とされます。この為、カテーテルアブレーションでは肺静脈をカテーテルにて焼灼・隔離することで異常な電気刺激を抑制し、心房細動を起こさない様にします。

当院では【高周波カテーテルアブレーション】と【クライオバルーンアブレーション】にて治療を行っております。【高周波アブレーション】では、3D mapping system(CARTO3 system、EnSite Navx systemを用いています)と呼ばれるカテーテル位置をリアルタイムに把握・記録できる機械を用い、肺静脈の周囲を1点1点焼灼し、これをつなぐことで異常な電気が心臓に伝わらない様にします。【クライオバルーンアブレーション】は心房内で風船を膨らませ、肺静脈をふさぐように当て、風船ごと冷凍凍結することで凍傷やけどを作り、肺静脈からの電気刺激が心房に伝わらない様にします。いずれを用いるかは患者さまの心臓の構造や病状により選択しております。

 

心室期外収縮

期外収縮とは刺激伝導系から外れたところから別の電気刺激が発生し、そのために脈が乱れることを言います。この異常な電気の発生する部位が心房の場合『上室性期外収縮』といい、心室の場合『心室性期外収縮』といいます。これらの不整脈は健康診断などでよく見つかる最もありふれた不整脈の一つです。基本的には良性なので治療対応は要さないことがほとんどですが、症状が強い場合、心収縮能低下がある場合、心不全を来した場合には治療を検討します。

抗不整脈薬の内服による治療とカテーテルアブレーションによる治療がありますが、抗不整脈薬は逆に病状を悪化させることがあり、治療はまずカテーテルアブレーションを行います。アブレーションが困難であった場合は、やむを得ず抗不整脈薬にて対応することを検討します。

 

心室頻拍

心室にて異常電気が発生したり、異常回路が形成されてしまうことで頻脈発作を起こすものを心室頻拍と言います。

この頻拍は毎分150-250拍もの早い脈で、心室の収縮タイミングが速すぎて空打ちの状態となり、心臓のポンプ機能は大きく低下します。症状には動悸・ふらつき・胸痛・呼吸困難・失神などがあります。基礎心疾患がなく無症状では非持続性(30秒以内)の心室頻拍には、経過観察のみで良い場合もありますが、それ以外の多くでは治療が必要です。

特に意識消失を伴うものや、「心室細動」という心臓痙攣状態となり突然死を来しうるものは確実に治療を行う必要があります。心室頻拍の原因には、心筋梗塞や心筋症などの基礎心疾患を有したものと、特発性心室頻拍と呼ばれる基礎心疾患がないものとがあります。

特発性心室頻拍はカテーテルアブレーションで根治する可能性が高く、治療後は抗不整脈薬の内服も不要になることがほとんどですが、基礎心疾患を有した心室頻拍では抗不整脈薬内服とカテーテルアブレーションの治療併用が必要であったり、高危険群では植込み型除細動器の植込み手術が勧められる場合があります。

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