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今回の抄読会は症候性低Na血症の補正について勉強しました
まずは2014年の欧州のガイドラインの治療箇所を松田先生か発表しました
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救急科抄読会 20211108 松田担当分
Clinical practice guideline on diagnosis and treatment of hyponataemia
European Jounal of Endocrinology (2014) 170, G1-G47
■低ナトリウム血症の補正法
7.1重篤な症状がある時
3%NaCl 150ml を20分以上かけて静注、20分後にNa再検、2回繰り返すか5mmol/lの上昇を認めるまで150ml投与を繰り返す
改善したら、原因に合わせた特異的な治療を開始するまでは0.9%NaClでルートキープ、安定するまでは6-12時間ごとに採血を繰り返す
7.2中等度な症状の時
原因を検索し、可能ならば影響する薬剤などを中止、原因特異的な治療を開始
3%NaCl 150mlを1回のみ投与、24時間で5mmol/lの上昇を狙う。1,6,12時間後に再検
7.3症状はないが急性の時
測定エラーがないか確認、可能であれば低ナトリウムを引き起こす薬剤などの中止、原因を検索
原因特異的な治療を行う。
急激な低下が10mmol/l以上であれば3%NaCl 150mlを1回のみ投与する。4時間後に再検
7.4慢性の時
低ナトリウムを引き起こす輸液、薬剤を中止する。原因特異的な治療を行う。
Mild hyponatremiaであればナトリウム値を上げる目的での治療をしないことを推奨
最初の24時間で>10mmol/l、その後の24時間で>8mmol/lとならないようにする
6時間ごとの再検、上昇しない場合は診断を再度確認
7.4.4慢性で循環血液量が少ない時
0.5-1.0ml/kg/hrの生食かリンゲルで細胞外液を補充
血行動態が不安定な場合は、ナトリウムの補正が速すぎることよりも、輸液による蘇生が優先
7.4.2慢性で細胞外液が多い時
Mild to moderate hyponatremiaであればナトリウム値を上げる目的での治療をしないことを推奨
輸液制限、バソプレシンを使わない
7.4.3慢性で細胞外液が多くない時=SIAD
輸液を制限することを第一選択
第二選択として、尿素の摂取、低用量ループ利尿薬と経口NaCl摂取
バソプレシン使わない
■補正が速すぎた時(7.5)
最初の24時間で>10mmol/l、その後の24時間で>8mmol/lであれば、再低下を試みる
積極的補正をやめる
10ml/kgの自由水(ブドウ糖など)を1時間かけて、尿量と体液量を厳重にモニターしながら投与するかどうかを、専門家にコンサルトすることを推奨
デスモプレシン2mcgを常駐するかどうかを専門家にコンサルトすることを推奨(8時間ごとよりも短い間隔で使用してはいけないことを理解した上で)
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ガイドラインにある当科ではボーラス投与の急速補正をしていない医師も多かったです
次にボーラス投与に関するRCTを佐藤裕紀先生と金城先生が発表しました。
JC 11月 金城担当分
論文タイトル:
Risk of Overcorrection in Rapid Intermittent Bolus vs Slow Continuous Infusion Therapies of Hypertonic Saline for Patients With Symptomatic Hyponatremia The SALSA Randomized Clinical Tria
⚫ 今までわかっていること
低Na血症は入院患者の14-42%に発生し、死亡率の上昇に関与している。低Na血症の補正にたいし高張食塩水を用いるが、高張食塩水の長期使用はODSのリスクがある。マラソンランナーの低Na血症補正のために高張食塩水の間欠的ボー^ラスト投与を使用する概念は2005年に導入され、アメリカとヨーロッパのガイドラインでは少量固定量ボーラス投与を推奨しているが,低速持続静注(RBI)と急速間欠ボーラス注入(SCI)による補正を比較した質の高いエビデンス報告はほとんどない
⚫ 今回の目的と方法
低Na血症の補正にRIBとSCIのどちらが有効で安全かを比較するランダム化比較試験を実施した。
P︓中等度以上の低Na⾎症患者で、補正⾎清ナトリウム (sNa)値が125mmol/L以下の18歳以上の患者178名
2016/8-2019/8 韓国の3つの総合病院の救急科・病棟を横断施行
*中等症;嘔気、頭痛、眠気、倦怠感、脱力感
*重症:嘔吐、昏迷、痙攣、昏睡GCS<8)
Exclusion criteria
原発性多飲症(尿浸透圧≤100mOsm/kg) 、 妊娠中または授乳中 、
無尿 ,低⾎圧(sBP 9%)
肝疾患(ASTが正常上限の3倍、非代償性肝硬変、肝性脳症、静脈瘤)
コントロール不良DM(HbA1c>9)、
3ヶ⽉以内の⼼臓⼿術、急性⼼筋梗塞、急性肝症候群、持 続性⼼室性不整脈、⼼室細動、頭部外傷、頭蓋内圧亢進 、偽性低Na⾎症(⾎清浸透圧>275mOsm/kg)
治療開始から最初は1時間、その後6時間ごとに ⾎液検査を⾏い、Na値を確認して数値をもと に介⼊していく
I︓3%⾼張⾷塩⽔の急速間⽋ボーラス療法 (RIB)
初回3%高張食塩水2ml/Kgを20分以上かけて急速静注 中等症は1回 重症は2回投与
24時間までNa上昇<5mmol/Lor症状残存→2ml/Kg を20分以上かけて投与
Na上昇5-9mmol/Land症状消失→Obsevation
Na上昇>10mmol/L→Na上昇<5-9mmol/Lになるまで自由水投与
24-48時間 Na上昇<10mmol/LorNa<130mmol/Lor症状残存→2ml/Kg を20分以上かけて投与
Na上昇10-17mmol/LorNa>130mmol/Land症状消失→obsevation
Na上昇>18mmol/L→Na上昇<10-17mmol/Lになるまで自由水
C︓3%⾼張⾷塩⽔の緩徐持続注⼊療法 (CIS)
初回 3%高張食塩水 中等症0.5ml/kg/hr、重症1.0ml/kg /hr
24時間まで Na上昇<0.5mmol/hr (3mmol/6hr)→0.25ml/kg/hr Up
Na上昇>0.5mmol/hr (3mmol/6hr)→そのまま継続
Na上昇 5-9mmol/L and症状消失→持続点滴中止
Na上昇>10mmol/L→Na上昇<5-9mmol/Lになるまで自由水投与
24-48時間 Na上昇<1.5mmol/6hr→0.25ml/kg/hrUpまたは0.25ml/kg/hrで再開
Na上昇>1.5mmol/6hr→同量で治療継続
Na上昇 Na上昇10-17mmol/LorNa>130mmol/Land症状消失→点滴中止
Na上昇>18mmol/L→Na上昇<10-17mmol/Lになるまで自由水
O︓Primary outcome︓過剰補正の頻度(sNa上昇が24 時間以内に12mmol/L、48時間以内に18mmol/L以上)
Secondary outcome︓治療効果と安全性
• 治療開始後24/48時間後の症状
• 治療開始後初めてsNaが5mmol/L以上上昇するまでの時間
• 治療開始からsNaが130mmol/L以上になるまでの時間
• ⽬標補正率の達成(24時間で5-9mmol/L上昇、48時間で10-17mmol/L上昇 もしくはsNa≧130mmol/L)
• ⼊院期間
• 追加治療の発⽣頻度
• ODSの発⽣率
• 逆補正(relowering)の発⽣率
• GCSの変化(治療前と治療後24時間・48時間)
⚫ 結果
ITTとPPの両方で実施。平均年齢73.1歳、男性44.9%。低Na血症の原因としては、チアジド系利尿薬(29.8%)、不適切な抗利尿症候群(29.2%)、副腎不全(16.3%)、非腎性ナトリウム喪失による細胞外液の減少(14%)、細胞外液量の増加(10.7%)で低Naが補正された場所は救急外来が大多数であったが、補正途中から一般病棟で行われた。ITT解析でもPP解析でもRIB群とSCI群で過剰補正発生率に差はなく、副評価項目ではODS発生は両群とも認めなかった。しかしRIBは逆補正の発生率が低く1時間以内の目標補正率も高かった。以上よりRBIは症候性低Na血症の治療として望ましいと提案でき、これは現在のコンセンサスガイドラインと一致している。
⚫ 今後の診療をどう変えるか
米国・欧州の最近のガイドラインでも有症状の低Na血症患者に高張食塩水のボーラス投与を推奨しており、本研究でもRBIの有効性を示している。
自由記載
Limitationとしては、RBIが一般的ではないことから之医療者がわ要素でのミスでのDrop out率が高いこと、また高張食塩水投与時通常4時間以内に再フォローとされているなか、6時間後とというフォロー間隔のながさ、適応外患者の厳しさなどが上げられる。
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ボーラス投与の妥当性はあると判断されます
今後は当科でも低Naの急速補正をEBMに基づいて実施したいと思います。
まとめ 増井