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- 救急科の特長
救急科専門医は、あらゆる急性疾患に初期対応できる能力が第一に求められます。
医療資源が乏しい環境であればもちろんですが、当院が所在する札幌周辺も、医療資源が豊富に見える一方で「専門ではないから他を当たってくれ」と、複数の医療機関で救急受け入れ不能事例が起きやすい現状にあります。そのような中で、一旦患者を受け入れてその傷病者に対応し、マネジメントできる医師がいることは、その患者、その施設だけでなく、地域全体にとって非常に重要な意味を持つこととなります。
本研修プログラムの目的は「あらゆる施設で独り立ちして働くことができるEmergency Room (ER)型救急科専門医を養成すること」です。
年齢、性別、罹患部位、重症度によらず、適切な診断・初期治療、そして適切な施設への紹介を含めた対応ができるようになります。専門家を温存して対応できる範囲を自ら判断し実践する能力、専門科医師とコミュニケーションをとり連携する能力、他院を含めた地域全体でその患者さんに必要な医療の提供をコーディネートする能力、当院ではこれらの能力を身に付けるためのトレーニングを積むことができます。
石狩北部地区のメディカルコントロール担当を通じてプレホスピタルケアについて学び、ICU/HCU の診療を通じて重症、集中治療管理を学びます。
救急搬送は年間8,000件以上(2019年)あり、多数の症例を経験することができます。一般的な救急手技から急性疾患、外因性救急、小児、特殊救急などありとあらゆる症例の患者さんが運ばれて来るので、日々目まぐるしい中で他院では経験できない救急対応トレーニングを積むことができます。
北大病院、札幌医大病院ほか道外も含め複数の連携病院にて高次医療機関での研修が可能です。二次救急から三次救急の治療の流れを見ることができ、二次医療と三次医療のそれぞれの役割を理解することで、広い視野での適切な医療対応を学ぶことができます。
当院では、一般病棟も持っており初療だけではなく集中治療管理から病棟管理まで治療の全体に関わるトレーニングを経験することができます。
ICU、HCUに移った重症患者の治療にも関わることができ、初療からの流れや結果を目の前で確認することができます。
また、救急科として一般病棟も持っているので容体の落ち着いた患者さんの入院管理にも携わり、治療全体を見ることができます。
経験したい場所の希望を考慮してシフトを組むことで、本人が希望する分野のトレーニングに力を入れることができます。
当院に来られる見学生や実習生は徳洲会=ハードなイメージをある程度持たれているかもしれません。
ある程度医療に没頭できる環境にいることはメリットだと思います。また病院全体が仕事に対して前向きな環境は働きやすいと思います。
実際に患者の診療の最前線に立つので身を以て学ぶことが多いため、勉強に対するモチベーションも全く違います。
勤務日はローテ科によって異なりますが、17時になればすぐ帰る人もいれば、医局に残って勉強していく人もいます。
当直がない日は基本的に遅い時間まで拘束されることはありません。
2020年の救急車受け入れ患者数は7474名(2019年は8791名)、時間外外来受診者数は7052件(2019年は10704名)であった。
Covid-19流行の影響から、救急車受け入れにあたりER・入院ともに個室が必要となること、時間外外来を一時閉鎖するなどの当院側の変化の影響と、受診者側の変化の両方により、数的には大きく減少したが、現場の負担感としてはむしろ増加した。
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1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
計 |
要請患者数 |
891 |
784 |
750 |
756 |
818 |
992 |
878 |
965 |
880 |
907 |
943 |
1023 |
10587 |
搬送患者数 |
643 |
594 |
577 |
533 |
526 |
691 |
638 |
694 |
639 |
652 |
615 |
672 |
7474 |
不応需数 |
248 |
190 |
173 |
223 |
292 |
301 |
240 |
271 |
241 |
255 |
328 |
351 |
3113 |
不応需率(%) |
27.8 |
24.2 |
23.1 |
29.5 |
35.7 |
30.3 |
27.3 |
28.1 |
27.4 |
28.1 |
34.8 |
34.3 |
29.4 |
不応需率は29.4%(2019年は15.9%)であり、大きく増加した。救急要請数は例年と大きく変わらなかった。
入院ベッド満床、特にCovid-19の可能性があるケースが入院する個室を用意できないことによるお断りが最も多かった。ERでの初療においても、陰圧個室を含めた3部屋をフル活用して受け入れを行ったが、発熱患者、エアロゾルが発生する4人目以降の救急患者を受けられない場面が少なからず発生した。
院内クラスターで救急受け入れを週から月単位で停止する救急医療機関が札幌市内では少なくない中で、院内の感染が原因で大きく救急受け入れを止めることは起こらなかった。無理をして受け入れることで院内クラスターを発生させる方が札幌市に対する責任が果たせないだろうと考えたが、苦渋の選択の一年であった。
厚生労働省が救命センターの評価をする際に用いられる定義による「重篤患者」、いわゆる三次救急相当患者数は、1405件(2019年は1724件)であった。
重症呼吸不全、心不全に対して、肺野に陰影がある以上Covid-19が否定できない状況となり、集中治療室の個室に空きがないことが原因で救急受け入れできない、手術室やカテ室での並列進行ができないという状況が少なくなかった。
救急搬送数に占める重篤患者の割合は、大きな変化を認めなかった。
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疾病分類
病気 4857(65.0%) ケガ 2361(31.6%) 中毒 256(3.4%) 大きな変化なし。
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転帰
死亡 37(0.5%) 入院 3509(46.9%) 帰宅 3698(49.5%) 転院 230(3.1%) 入院するベッドがないことでお断りすることが多い中で、入院率は2019年の41.8%から46.9%へむしろ上昇した。地域の入院ニーズに応えられる施設が激減したが、当院は入院ベッドにキャパシティーがある限り受け入れた結果、救急車件数が前年比15%減に対して、救急からの入院者数は5%減となっていた。多くの救急要請を断ることにはなったが、入院が必要な症例にはできる限り対応した。
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救急入院患者の入院先
ICU 318(9.1%) HCC 297(8.5%) CCU 31(0.9%) EHCU 78(2.2%) 一般病棟 2785(79.3%) 個室を備えていないCCU, EHCUへの入院は、Covid-19流行下では困難であった。
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外国人患者の受け入れ
救急車65件、歩行来院患者190件、入院0件であった。札幌市と外国人患者の受入に関する協定書を結んで4年が経過したが、Covid-19流行初期には札幌市での流行の最先端となったが、流行が進むに従い外国人観光客がほぼゼロとなり、救急受診の数も大きく減少した。