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今回は軽症小児頭部外傷に関するギモンに答える2つの論文を読んでみました。
1つめの論文です
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Andrew J. Knighton et al. Improving Head CT Scan Decisions for Pediatric Minor Head Trauma in General Emergency Departments. Ann Emerg Med. 2022. PMID: 35752519
【What’s already known】
軽度頭部外傷で受診する小児患者の中で致命的な者は1%未満である。頭部CTは低リスク患者には診断的意義が少なく不必要な被曝をもたらす。小児救急応用研究ネットワーク(PECARN)は有効な頭部C T適応基準を発表したが現在も低リスク患者に頭部CTが頻繁に施行されている。
【Objective】
- 複数の医療戦略の効果を評価し、外傷性脳損傷の低リスク群の頭部CT実施数を減らすこと。
- 72時間以内の再入院の評価をすること。
【Methods】2018年7月〜2020年12月、21箇所の1~2次医療機関、前向きコホート
対象:18歳未満の軽度頭部外傷の小児患者
■Exclude:頭部外傷よりも懸念すべき鑑別疾患がある小児患者
〇PECARNにおけるCT適応(2歳未満と2歳以上に分類)
低リスク群:明らかな外傷性脳損傷の所見がなく頭部CTを施行すべきではない。
中リスク群:複数の或いは増悪する症状が出現しており頭部C Tによる神経学的評価が考慮される。
高リスク群:頭部CTを施行すべき。
評価項目: 頭部 CTを施行した割合、初診時に頭部CTを施行せず72時間以内に再入院となった患者の経過
統計学的解析:stepped- wedge design、マルチレベル順序ロジットモデル
【Results】
・対照月と比較して対象付きはPECARN遵守する症例が有意に多く、(オッズ比1.12[1.03~1.22])頭部CT施行数が有意に減少した。(オッズ比0.96[0.93~0.98])また、CT陽性率も有意に高かった。(オッズ比1.45[1.00~2.08])
・72時間以内に外傷性脳損傷で入院となった患者はいなかった。
【Discussion】
Strength:この研究は単一の統合医療提供システムにおいて、各施設で同じ医療設備とクリニカルパスを用いて実施されたため再現性が高い。
Limitation:外傷性脳損傷で研究対象外の医療機関に入院した患者がいる可能性があること。また、1週間後以降に外傷性脳損傷の症状が出現する可能性があること。
【conclusion】
この研究は不必要な頭部CT施行数の減少に貢献した。
【松田伊織先生発表】
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<コメント>
PECARN導入後不要なCTが減ったという当たり前の話ですが、以外とまだ介入ができていない医療機関があるのだなという印象です。今後はPECARNを基準としている病院以外でも、同様の不要なCTを取らないマネジメントができるかというところが医学的には重要そうです。
2つめの論文です
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論文:Pediatric Traumatic Injury Emergency Department Visits and Management in US Children's Hospitals From 2010 to 2019
文献名:Ann Emerg Med. 2022 Mar;79(3):279-287.
PMID: 3483994
【どのような文献か】
米国において0-19歳の小児の死亡、および後遺症の主な原因は外傷であり、小児外傷による医療費と労働損失費用は約520億ドルである。小児のERにおける受診と入院の傾向を調査することで外傷の予防や治療戦略の最適化に重要である。
Pediatric Health Information Systems(PHIS)へ参加している米国の33の小児病院を対象に2010-2019年までの外傷関連ER受診と管理の傾向を調査した。
【わかっていること】
米国において過去10年間で小児外傷管理の合理化が進んでいること
【わかっていないこと】
2010年から2019年の10年間で小児の外傷によるER受診数がどのように変化したのか、また外傷の部位や人種、加入保険によって受診およびdisposition(入院or帰宅)に差があるのか、高度な画像診断(CTおよびMRI)はどのように変化したのか。
【論文で新たにわかったこと】
・研究対象となった33のPHIS病院において2010年には225万件、2019年には265万回のER受診件数となった。このうち外傷関連の受診数と割合は増加傾向で、2010年には367,072件(16.3%)、2019年には479,458件(18.1%)であった。しかし医療費の中央値は減少傾向で入院率の低下が寄与していると考えられる。
・年齢別に見ると、最も多かったのは1〜4歳、次いで5〜9歳の小児であった。外傷患者は非外傷の患者と比較して、1歳未満の子供の割合が低く、10〜14歳の割合が高かった。
・人種別に見ると、外傷患者の大多数は白人(54.6%)、次に黒人(24.2%)、その他≒主にヒスパニック(13.4%)であり、入院率は有意に白人が多かった。保険に関しては、外傷患者の過半数(54.5%)が公的保険加入者だが入院患者は民間保険加入者が多かった。
・頭部外傷、頚椎損傷は研究期間の前半で減少しその後は増加傾向である。胸腰椎の損傷は有意に増加傾向で大腿骨骨折、肝損傷、脾損傷は横ばいである。画像検査については頭部CTは減少のち増加傾向、頭部MRI、頸部CTとMRIは有意に増加傾向である。
【今後の診療をどう変えるか】
頭部外傷ならばPECARN小児頭部外傷ルールを適応して不必要な画像検査を減らす、不必要な経過観察目的の入院を減らして外来によるフォローアップを行なう。またこれらの内容を保護者にも適切に説明する。
【内田先生発表】
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外傷に関する疫学研究です。PECARNで実施CTは減りましたが、やはり一部の重症頭部外傷は入院となっており、依然として入院は頭部CTが最も多い外傷部位となります。本研究では一旦頭部外傷の入院件数はプラトーに達した印象でした。