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今回はERで遭遇する眼外傷の臨床のギモンに答える2つの論文を読んでみました。
1つめの論文
眼科外傷でコンサルト前にどんな所見があれば緊急性があるかわかれば、コンサルトのタイミングも同日、翌日と調整できます。そのような疑問に答える論文を探して読んでみました。
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Factors Associated With Increased Risk of Serious Ocular Injury in the Setting of Orbital Fracture(JAMA Ophthalmol. doi:10.1001/jamaophthalmol.2020.5108)
【研究の目的】
眼窩骨折による眼損傷の可能性を高める、臨床所見および画像所見の特定。
【わかっていること】
救急外来受診する顔面外傷の10%〜25%が眼窩骨折を伴うと推定される。そのうち73%〜92.3%は眼損傷を有さず、大部分は良性(結膜下出血または眼窩周囲腫脹など)である。しかし、まれだが眼窩骨折により重篤な眼損傷が起こりうる。
【わかっていないこと】
眼窩骨折による重篤な眼損傷の可能性を予測するためのツールが必要である。
【方法】
2012年-2018年、眼窩骨折の患者の後ろ向きケースシリーズ。
2012年-2017年の間の合計430人の患者(500眼)が、サンプルの基準を満たした。
予測モデルを構築した後、2017年-2018年の間に、包含基準を満たした88人の患者(97眼)。
■主要評価項目:眼窩骨折とは異なる実質的な眼損傷
【結果】
以下の5つの変数が眼損傷のリスク増加と関連していることがわかった。
・異物による鈍的外傷(オッズ比[OR]、19.4;95%CI、6.3-64.1;P <0.001)
・指を数えることができない(OR、10.1;95%CI、2.8-41.1;P = 0.002)
・眼窩上壁骨折(OR、9.1;95%CI、2.8-30.0;P = 0.002)
・複視(OR、6.7;95%CI、1.7-25.1;P = 0.003)
・結膜出血または結膜浮腫(OR、4.2;95%CI、2.2-8.5;P < .001)
95%の感度(95%CI、77.2-99.9)、40%の特異度(95%CI、28.9-52.0)、
31.8%の陽性的中率(95%CI、27.5-36.5)、および96.8%の陰性中率(95%CI、81.3-99.5)
【論文で新たにわかったこと】
眼窩骨折を有する患者の少数ではあるが眼損傷を有しており、特定の画像所見および臨床所見は、眼損傷と関連していた。
【今後の診療をどう変えるか】
顔面外傷および眼窩骨折の患者において、身体所見・画像所見で眼損傷の可能性を評価し、眼損傷を見逃さないようにする。
【福迫先生発表】
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・異物による鈍的外傷・指を数えることができない・・複視・結膜出血または結膜浮腫、など骨折以外は身体所見+眼窩上壁骨折これだけ画像ですが、眼窩骨折を疑えばCTを取りますので、ERでも評価は可能な5項目です。これらが無ければ眼科コンサルトは翌日以降でもよさそうです。
2つめの論文は眼球超音波に関する論文です。
国内では保険適応の問題など色々ハードルがありますが、そもそもどれくらい有用なのか確認してみました
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Are Emergency Practitioners Able to Diagnose Posterior Chamber Abnormalities With Point-of- Care Ocular Ultrasonography?
Ann Emerg Med. 2020 Dec;76(6):767-769.
PMID: 32563602
【研究目的】
ERでPoint-of-care眼球超音波検査を用いて救急医がどの程度眼球を診察できるのかメタ解析で評価した
【わかっていること】
超音波検査での眼球後部の評価は講習やトレーニングを受けた救急医も行っている。
【わかっていないこと】
救急医による超音波検査での眼球後部の評価の診断精度を網羅的に評価した研究はなく、その正確さは不明であった。
【論文で新たにわかったこと】
救急医による網膜剥離の検査の感度が94%(88%~97%)、特異度が94%(85%~98%)➡熟練度によらず救急医による緊急性高い網膜剥離の診断は正確性が高く有用性がある。
他の眼科疾患では正確性はあると言えるが、研究報告数が少ないため信頼区間の幅が広く有用性については検討できなかった。
【今後の診療をどう変えるか】
緊急性の低い網膜剥離の診断は熟練度に左右されるため、救急医の熟練度の向上が必要か。また、救急医による網膜剥離以外の眼科疾患に対する診断精度の程度を図るべく今後積極的に報告して研究する必要がある。
【有川先生発表】
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救急医でも診断率はそこそこです。
あとは保険診療の問題ですね。
マニアックな眼外傷といわず、何を診れがよいかわかれば対応はできるものです。
今回の抄読会を参考に日常診療に活用してゆこうと思います。