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当院ではCOPD増悪を救急科が入院担当するケースは少なくありません。このCOPD増悪の治療と言えば経口ステロイド、ガイドラインでも推奨されるスタンダードな医療です。一方でその投与量については意見の分かれるところです。
またCOPD増悪の入院後のリハビリってどれくらい効果があるのでしょうか? 今回はCOPD増悪の急性期治療と入院管理における2つの論文を読んで診療に生かせるように抄読会をしました。
1つめの論文です
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Personalized Variable vs Fixed-Dose Systemic Corticosteroid Therapy in Hospitalized Patients With Acute Exacerbations of COPD
CHEST 2021; 160(5):1660-1669
【分かっていること】
COPD急性増悪の治療における全身性コルチコステロイドは、肺機能と酸素化を改善し、早期再発と治療失敗のリスクを減らし、早期回復を見込める。
【分かっていないこと】
COPD急性増悪の患者に対する全身性コルチコステロイドの最適な投与量。
【研究課題】
COPD急性増悪の患者の入院中に、個別用量のコルチコステロイドを投与することは、固定用量のコルチコステロイドを投与するよりも効果的であるかについて検討した。
【方法】
COPD急性増悪の入院患者248名を1:1の割合で固定用量群(プレドニゾロン40mg相当を投与)または個別用量群のいずれかに5日間無作為に割り付けた。
■主要評価項目:複合的な治療失敗指標=院内での治療失敗+退院後の中期的な治療失敗
■副次的評価項目:入院期間と費用
■個別容量の決定方法
①Anthonisenタイプ、COPD Assessment Testスコア、以前の増悪の際のプレドニゾロン用量、炎症マーカー値(CRP、好酸球)、血ガス値(pH or PaCO2)で決めるDosing score(−1〜4)を計算
②投与量=0.5mg×体重(kg)×(1+Dosing score)⇨ 0~2.5mg×体重(kg)
【結果】
・治療の失敗:固定用量群(48.8%)vs個別用量群(27.6%)(相対リスク,0.40;95% CI,0.24-0.68;P=0.001)
・院内治療失敗率:固定用量群(24.4%)vs個別用量群(10.6%)(P=0.005)
・中期治療失敗率、有害事象率、入院期間、費用は両群間で有意な差はなかった
・個別化投与群では、40mg以下の投与を受けた患者の平均治療失敗率が44.4%であったのに対し、40mg以上の投与を受けた患者では22.9%であった(P=0.027)。
【まとめ】
コルチコステロイドの個別投与は治療失敗のリスクを減少させるが、これはより多くの患者に高い初期投与量(特に60mg以上)が投与されたためである。
【今後の診療】
COPD急性増悪に対するコルチコステロイド投与においてはDosing Scaleで初期投与量を決定し、60mg以下の投与量となった患者には投与量の再検討が必要となる可能性がある。
【埜口先生発表】
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ガイドラインにおける投与量(経口プレドニン40mg)は妥当な中で、一部の重症患者さんではそれ以上投与することも検討してよさそう、という意見が多く当院でもケースバイケースで投与量は検討する方針を確認しました。
2つめの論文です
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タイトル
抄読会7月 2年次研修医 市村分
Association between Initiation of Pulmonary Rehabilitation and Rehospitalizations in Patients Hospitalized with Chronic Obstructive Pulmonary Disease
Stefan, Pekow, Priya, et al.: Pulmonary Rehabilitation and Readmissions for COPD
2021 Nov 1; 204(9): 1015–1023.
≪論文のまとめ≫
退院後90日以内に呼吸リハビリテーション(PR)を開始することがCOPD急性増悪での1年以内の再入院率を下げる。
・分かっていること:PRが再入院リスクを低減させること。
・分かっていないこと:PRがどの程度診療に影響を与えるか。
・論文で新たに分かったこと:90日以内のPR開始が有意に1年以内の再入院リスクを低下させる。
・今後の診療をどう変えるか:PRへの参加と継続を指導していく必要がある。
≪本研究≫
【研究デザイン】
後ろ向きコホート試験
【結果】
対象: 2014年に入院したCOPD急性増悪した米国の66歳以上のメディケア受給者。4,446病院から集めた197,376人のうち2,721人(1.5%)がPRを90日以内に開始。
主要評価項目:COPD以外を含む全原因における1年以内の再入院率は
PR早期開始群vs非実施群(56.4% vs 64.6%)で早期開始群が相関あった。
平均再入院回数(1.2 vs 1.5) も有意に少なかった。
二次評価項目:1年以内のCOPD増悪としての再入院は、
PR早期開始群vs非実施群(33.6% vs31.5% p=0.021)と早期開始群で多いが
1人年あたりの日数は(11.5日 vs 22.7日)と短かった。
Table 1:PR早期開始群と非開始群の要素ごとの比較
Table 2:PR早期開始群と非開始群を全観察数と傾向スコアマッチでの再入院日数
【結論】
COPD急性増悪で入院した患者がCOPD以外の原因を含む1年以内の再入院を予防する上でPRを退院後90日以内に開始することが有用である。またCOPD増悪での再入院をきたした際に再入院の入院期間を短縮させることに寄与する。
【市村先生発表】
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リハビリは効果がありそうですが、入院後となると保険診療の問題で国内では難しい印象です。ただ入院中は忘れず呼吸器リハを入れることは重要だと再確認をしました。