蘇生後CO2、蘇生中DC

 

今回は心肺停止や蘇生後患者の治療に関するギモンに答える2つの論文を読んでみました。

 

1つめの論文です

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 Mild Hypercapnia or Normocapnia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest

N ENGJ J MED (2023) 389;1 G. Eastwood et al.

 

【わかっていること】

①PaCO2が1mmHg上昇すると脳血流を脳組織100gあたり最大2ml 増加させる。

②蘇生後の高炭酸ガス血症は自宅退院率を上昇させ、12ヶ月後の神経学的予後が良好である

③高炭酸ガス血症で脳損傷のバイオマーカーである神経細胞特異的エノラーゼの放出量が抑制される。

→軽度の高炭酸ガス血症は心停止蘇生後の脳低酸素症による神経学的予後が改善するのでは

 

【わかっていないこと】

心停止蘇生後神経学的予後が改善する最も効果的なPCO2の目標値

Method

院外心停止後蘇生された昏睡患者の成人を対象にPaCO2を軽度高値(50〜55 mmHg)とした場合と正常値35〜45 mmHg)の場合に1:1の割合で無作為に割り付け(1700例中847例をPaCO2軽度高値群、853例をPaCO2正常値群)、無作為割付後から24時間それぞれのPCO2目標値を維持し6ヶ月後神経学的予後が改善されるか検証。

Outcome

主要アウトカム:6ヶ月後の神経学予後(Glasgow Outcome Scale-Extended(GOS-E)5以上)

副次的アウトカム:6ヶ月以内の死亡および6ヵ月後の機能的不良(6ヵ月後のmRS4以上)

Result

主要アウトカムとして、6ヶ月の時点での良好な神経学的予後を認めたものはPaCO2軽度高値群764例中332例(43.2%),正常値群では784例中350例(44.6%)副次的アウトカムとして6ヶ月以内の死亡リスクはPaCO2軽度高値群816例中393例(48.2%),正常値群では832例中382例(45.9%)。

頻度の高かった有害事象は、肺炎、血行動態を悪化させる不整脈、敗血症、出血。これらの有害事象の発生率は群間で有意差なし。

 

【論文で新たにわかったこと】

軽度の高炭酸ガス血症は6ヵ月後の神経学的予後を改善しない

 

【今後の診療をどう変えるか】

心停止蘇生後患者では軽度の高炭酸ガス血症を目標にすることに有益性(または有害性)はなく、これらの患者には正常PCO2が目標で十分となる。

 

 

【荒木先生発表】

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<コメント>

やっぱり脳圧を直接測定することが難しく、結果的には神経症状のみしか見ることができないことが、この手の研究の難しいところです。結果的にはNegative dataですが、あえてCO2を挙げることはしないのではという意見もでました。CO2以外の治療の整合性はとれず交絡因子の問題もあったのではという指摘もありました。

 

2つめの論文です

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論文名:Defibrillation Strategies for Refractory Ventricular Fibrillation

文献名:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

PMID:36342151

 

●わかっていること

・北米において院外心停止で35万人以上が突然死している。

・この中で10万人近くが心室細動(VF)もしくは無脈性心室頻拍(pVT)で比較的生存率が高いが約半数は除細動しても難治性で、同様の除細動を行っても改善しない場合が多い

・院外でのDSED、VCの使用はいくつかの報告がある

 

●わかっていないこと

・抗不整脈薬(アミオダロン、リドカイン)の使用は生存率や神経学的予後を改善するかは明らかでない

・DSEDは通常の除細動で改善されない場合に施行されるため、DSEDが施行されるケースは心停止から時間が経った症例や予後不良な症例が多い。DSED早期導入で高率に除細動できる可能性がある。

 

●新たにわかったこと

・DSED群に125例(30.9%)、VC除細動群に144例(35.6%)、標準的除細動群に136例(33.6%)

・生存退院率は、標準的除細動群の13.3%に比べ、DSED群が30.4%、VC除細動群は21.7%

・心室細動停止率は、標準的除細動群の67.6%、DSED群は84.0%、VC除細動群は79.9%

・心拍再開率は、標準的除細動群が26.5%に対し、DSED群は46.4%、VC除細動群は35.4

・mRS2以下達成率は、標準的除細動群の11.2%DSED群が27.4%、VC除細動群は16.2%

 

●今後の診療をどう変えるか

・DSEDは良好な結果が得られ推奨される

・除細動器が2台用意できない現場もあるためその場合には標準的除細動よりもVC除細動が推奨される

 

通常:右前上胸部+心尖部

VC:左前胸部と背部

DSED:通常+VCで連続放電

 

 

【石嶋先生発表】

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DSEDのやり方はYoutubeでも確認できます

https://www.youtube.com/watch?v=Ov-BBUhKdJU

 

この研究がすすむと、将来的にパットが大きくなりDESDが常設されている除細動器が市場に出てくるかもしれません。