血液や尿をはじめとする体液中にはがん細胞をはじめとする全身の腫瘍由来の遊離核酸(cell free DNA; cfDNA)が存在しています。様々な組織・細胞の遺伝子情報が含まれるため、新しいがん診断に役立つ技術として世界中で注目されています。この新しい診断法は「リキッドバイオプシー(Liquid Biopsy)と呼ばれ、従来の組織生検と比べ少ない侵襲で遺伝子変異のプロファイリングが可能であり、腫瘍の内部や原発巣と転移巣との間に見られる腫瘍の不均一な特性の全体像を捉えられる利点があります。さらに、遺伝子変異の検出感度が高まっていることで、早期癌診断のツールとして大きな期待が寄せられています(図1)。
我々は2014年より超高感度なデジタルPCR(図2)を用いて、低コストかつ実臨床での運用可能な解析パッケージの開発を進めており、これまでに、徳洲会グループの基幹病院をパートナーとする多施設共同研究を進めてきました(UMIN000012810)。主に膵癌や大腸癌などの消化器癌、乳癌、肺癌などの患者さんにご協力を頂き、血液や尿から遊離核酸を精製し、デジタルPCRによりKRASなどのがん関連遺伝子の検出を進め、成果をあげています。現在は旭川医科大学および連携病院の協力のもと、臨床研究「遊離核酸を用いた膵腫瘍の低侵襲診断」として発展させ、デジタルPCRに加え次世代シーケンサーの分子バーコード技術(図3)を駆使して血液・消化液中の核酸より膵がんに頻繁に見られる遺伝子変異を多角的に捉える試みを進めています。
また、将来のゲノム医療時代に向け、検体と情報を一元管理し、解析結果を正確かつ迅速に医療機関へフィードバックするインフラ整備が広い地域まで求められることから、当解析部・企業・旭川医大との産学連携により、診療情報から遺伝子解析情報までを網羅したデータベースといった「情報インフラ」と、解析検体を解析センターに効果的かつ省エネルギーな方法で輸送できる「流通インフラ」の両面についての開発(図4)を進めています。
またデジタルPCR技術を応用し、微量な生検組織を用いた遺伝子解析系の開発にも取り組んできました。これまでに、針生検などで得られる微量検体を試料として、組織を水に懸濁することによる浸透圧破裂を利用して核酸精製行程を省いた、迅速かつ高精度・低コストのデジタルPCR診断法 (図5)について発表しました(Ono.Y,2020;特許出願中)。生検提出される検体の中に、たとえ数個でも癌細胞が含まれていれば、その変異を捉えることが可能であるため、膵がんをはじめとする難治がんの確定診断において経験する細胞診・組織診の検体不良という問題を解決することが期待されます。
腫瘍生物学、腫瘍診断学、ゲノム科学
日本癌学会、日本人類遺伝学会
耳鼻咽喉科学、頭頸部外科学、喉頭生理学
日本耳鼻咽喉科学会(専門医・指導医)、日本頭頸部外科学会(頭頸部がん専門医)、日本気管食道科学会(専門医)、日本癌治療学会(癌治療認定医)、日本耳科学会、日本喉頭科学会、日本嚥下医学会、 日本内分泌・甲状腺外科学会、耳鼻咽喉科臨床学会、日本口腔咽頭科学会
乳腺外科
日本外科学会(専門医)、日本乳癌学会(乳腺専門医)、日本がん治療認定機構(がん治療認定医)、日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影(認定医) がん治療に携わる医師を対象とした緩和ケアに関する研修修了
耳鼻咽喉科学、頭頸部外科学
日本耳鼻咽喉科学会(専門医)、日本頭頸部外科学会、日本頭頸部癌学会、日本癌学会、日本癌治療学会